そいつぁ底辺だっ!! ~ホームレスからの脱出~

葬儀屋からホームレスへと落ちた40男の華麗なる脱出劇(になるといいな)なブログ

30代で心筋梗塞 その2 ~バイパス手術と前兆はあったのに見過ごしたお話し~

f:id:butafe:20190329213406j:plain

心筋梗塞の前兆

34才の冬、心筋梗塞になり地元の病院で「うちの病院じゃ手術無理だからよその病院行ってね♪」と言われた前回の続き


www.butafe.site


手術の話しの前に、ここまでなるのに気付かなかったのかって事なんですが

心筋梗塞の場合、前兆もなく起こるパターンもあります。ある日突然といった感じですね。

一方前兆がある場合

  • 胸が痛い
  • しめつけられるような胸の苦しさ
  • 左肩が痛い

等があるようです。

私の場合ですが、今思えば前兆ありました。春先に市民マラソンに出る事が決まっていたので、秋口ぐらいからその練習をしていたんですね。その時一緒に走っていた友人に

「息切れが尋常じゃない。どっか悪いんじゃない?」

とは言われてました。あと運動したあと左手首の関節か血管が『キュウ』と詰まるような痛さがありましたね。また心筋梗塞になる10日前ぐらいには、マラソンの練習中に息苦しい感じがして吐きましたし……

さすがにここまで言うと

「いや、気付けや!!」

って話しなんですけど、少し休めば収まるぐらいの症状だったんで軽く見てたんですよねぇ……

そして心筋梗塞の引き金がこれなのかなぁというのを思ってる事がありまして……


ストレス


今まで生きてきた中で最大級のストレスを感じる出来事がありました。思い出すとしんどいので箇条書きで。今でもトラウマです……


心筋梗塞1週間前
ある友人と飲みに行く

心筋梗塞4日前
その友人が自ら命を絶つ。

心筋梗塞2日前
彼の通夜が終わったあと友人の父親から『最後に会った時、異変に気付いてやってほしかった』旨の事をかなり激しい言葉で言われた。

みたいな感じです。


亡くなった彼とは家が近所で、子供の頃よく遊んでたんです。彼の両親にもかなり可愛がってもらってました。大人になってからはほとんど会う事はなかったので「飲みに行こう」と言われた時「珍しいな」とは思ってたんですけどね。

後日、彼の両親は入院している私の所へ来て、通夜の日の事を泣きながら謝罪しに来られました。私が心筋梗塞で死ぬ所だったと聞いて『もう一人の息子(私の事です)を失わなくてよかった。』という言葉が印象的だったのを覚えています。

この話はちょっとまだきついんでこの辺で。


まあこのようなストレスが無かったとしても、いつかは血管詰まってたでしょうけどね。

当時マラソン大会に出る為、かなり無茶なダイエットをして体をしぼってましたし、煙草も吸ってました。

肥満
極端な食事制限
喫煙
過度なストレス

心筋梗塞になってもおかしくない要素は揃っていました。

天使と悪魔と神様と。

さて、救急車で転院先の病院に着いてからの話しです。救急センターの集中治療室のベッドに乗せられ医師から説明を受けます。

  • 状態はかなり危うく、今すぐ手術しないと確実に死ぬ
  • 術式は左太ももの血管を取り、心臓の血管の迂回路を作るバイパス手術で行うとの事。

冠動脈バイパス手術(CABG)は、胸を開いて、詰まった冠動脈の先に迂回路(バイパス)をつくる手術です。この処置により、狭心症や心筋梗塞の原因となる心臓の筋肉の血流不足が改善されます。

  • 手術の為に一旦心臓を止め人工心肺につなぐ

等でした。

「あれ?これ……死んでもおかしくないんじゃない?」

この時点で初めて命の危機を実感しましたね……
ただ『死ぬかも』と思っても、精神的に動揺はあまりなかったし悲観もしなかったです。でもなぜか自然と涙がこぼれるんですよ。どんどん出てくる感じじゃなく、すうっと頬を一筋だけ。美少女なら真珠のように美しいんでしょうけどね、30代のおっちゃんならただの体液、よだれと変わんないです……

それに気付いた看護師さんがそっと優しく涙をぬぐってくれました。

「不安ですよね……でもがんばりましょうっ」

マスク越しなのに解るその優しい笑顔

……天使かっ!!

続いて担当の医師からも声をかけられます。

「ぶたふぇさーん、この手術のおかげで私、徹夜ですよ、徹夜。もーめっちゃ眠いぃっ!」

悪魔かっ!!

医師が続けます。

「私らに徹夜させるんやから、絶対助かってもらうからね」

私が『助かりますか?』と聞くと

「助けるよ?30年保証付きのええ血管つなげるよ。」

マスク越しにニカッと笑ってるのが解りました。
命も血管もつなげると…………

……か、神かっ!!

今思うと「めっちゃ眠い」とか言ったのは、リラックスさせる為なんでしょうね。演出7割、本音3割といったとこでしょうか?プロですな。

「さあ……ぼちぼち、いこか?」

医師に声をかけられ手術室へと移動します。


もう少しだけ続きます。

30代で心筋梗塞 ~その現象に名前をつけるとしたらトリプルハートブレイク~ 

f:id:butafe:20190326212313j:plain

ソレが心筋梗塞になりまして。

今から3年前の34才の冬、私は心筋梗塞になりました。

12月のある寒い日、職場で暖房の効いた部屋から屋外に出た時の事です。冷たい空気を吸いこんだ瞬間に、肺が『ヒュッ』っとなり、胸がしめつけられるような感じに……


10代の女の子が『胸をしめつけられる』と言えば恋が始まるトキメキキラキラなんでしょうけど
30代オッサンが『胸をしめつけられる』と言えば、病気になる冷や汗ダラダラしかないわけです


軽く息苦しい感じはなかなか治らず、家に帰って寝ようと思い上司に早退を願い出たところ『はよ帰れ』との、優しいのか冷たいのかよく解らないお言葉。甘えます。


帰る前に後輩Y沢(当時27才 女性)に声をかけました。


「ごめん、しんどいんで家帰って寝るね。あとよろしく」

「どっか悪いんですか?」

「何か胸がつまるような……ドキドキすんの。ときめいてる?これが恋なん?」

「いやぶたふぇさん、そのドキドキ動悸ですよ。オッチャンなんやし」


とまあ実際にこんな会話かわせたくらい余裕あったんですけどね、でもすぐ後輩が


「ん?ぶたふぇさん、顔色が土色……普通じゃない。すぐ病院いった方がいいですよ」

「大げさな。家帰って寝るよ」

「いや絶対あかんやつやって、それ」

「でも病院嫌いやし……」

「言うてる場合?じゃあ私を安心させる為やと思って、お願いやし病院行って?」


何、この哀願っぷり
こいつ……もしかして俺に好意をっ!?

ごめんね、非モテ族の同士諸君……俺、今日からモテ族にジョブチェンジするよっ!

 
後日、この日の事を後輩Y沢にきいてみました。

ー当時の様子を聞かせて下さい。


そうですねぇ、あの時は『あっこれはただ事ではない』と思いました。それぐらい顔が悪かった。


ー『顔が』?『顔色』ではなく?


え?あぁはい、失礼、顔色。
顔色、土色、ドロ人形。って感じでしたよ。


ーその後『お願い、病院行って』と潤んだ瞳でぶたふぇさんにすがりついたそうですが、ずばり聞きます。彼に好意を?


まず瞳は潤ませてないですね。私、ドライアイなんで。むしろ乾いてたんじゃないですか?


ーなるほど……彼の勘違いと?


ですね(笑)乾いてました。瞳も心も。


ーでは、好意というのも勘違い?


先輩に好意?ないですね(笑)ないです、ほんっとない。200%ないです。七回生まれ変わってもありえないです(笑)


ーでは、その時の心境を率直に聞かせて下さい。


あの時病院へ行けと言ったのは、今死なれると困るからです。人手が減って仕事が忙しくなるのはもちろん、先輩の葬儀をうちでやる事になった時、納棺するの大変でしょ?だって彼……重いし(笑)逝くならもっと痩せてからでないと。


ーなるほど。大変参考になりました。今日はほんとにありがとうございました。


ありがとうございました。  


これ表現方法違うけど、実際言われてるからね?
ほんとの会話再現すると、心の傷のかさぶたがはがれちゃうから表現方法変えてるからね?

心と心臓両方に傷を抱えて、今日もぶたふぇは元気に生きてます。
まあそうやって生きてるのも後輩のおかげなんですが……
病院嫌いだから、言われなかったら絶対家に帰ってた。そうしてたら確実に死んでましたね。
命の恩人です。恩義もあってここ数年間、いいようにたかられても文句はいいませんよ?心の中だけでしか。

ああ言い忘れてた。非モテ族の同士諸君、ただいまだよ……





病院へ行こう。


後輩にそこまで言われるとさすがに不安になり、念のため病院行っとくか……と車で10分ほどの総合病院まで自分で運転していきました。

受付に行きへらへらと
「何かね、ちょっとおかしいんですよ。胸がつまるっていうか……しんどいです」

それを聞くなり受付のお姉さん
「今、車イス持ってきますっ!」と対応。

すげえ大げさっ!と思ってたんですけどね、車イスを見た瞬間、急に立っていられなくなり倒れこむように車イスに座りました。

病院の受付の人って顔みただけでわかるもんなんですね、さすがプロ。

すぐに処置室へ通されエコーをとられます。エコーを見た先生は言いました。

「ぶたふぇさん、心臓カテーテルしましよう」

心臓カテーテル検査とは、カテーテルと呼ばれる細長い管を、心臓に血液を供給している冠動脈の入り口まで通し冠動脈内に造影剤を流し込みX線撮影、心臓を栄養している血管(冠状動脈)の細くなったり、詰まったりしている部分を写し出す方法


心臓カテーテル検査中、モニターを見ながら先生の表情がどんどん険しくなっていくんですよ。そしてトドメ。

「ああ……これ……やばいな…………だめだ」

ダメって言った!?今絶対ダメって言ったっ!!

「え?先生、結構深刻なんですか?」

「はい、かなりです。ぶたふぇさんこれまずいですよ。心臓につながる4本の血管の内、3本詰まってます。そしてあと一本も詰まりかけ」

「残ったもう1本も詰まれば?」

「生きてる事が難しくなるでしょうね」

「死ぬ?」

「死ぬ。」

その後医師から『うちの設備では手術できないので車で一時間ほどある県内の循環器系病院か、ヘリで30分ほどの県外のさらに高度な医療をしている病院かどちらかを選んでほしい』という旨の事を言われました。

この時私が考えたのは

『来なくていいって言っても誰かしらはお見舞い来るだろうし、なるべく近い県内の病院がいいなぁ』

と県内の病院を希望します。
今思うと、お見舞いの心配とか的外れなんですけどね。ほんとお見舞いがお悔やみにならなくてよかったわぁ。うちの会社の売り上げに貢献できなくてごめんね、社長。あと給料あげて。有給下さい。



ただこの後の記憶が何か曖昧なんですよねえ……場面と時間がすごく飛ぶ。
いつの間にか、離れて住む母と兄夫婦と姪がいたんですけど、誰が連絡したんだろ?覚えてないんです。

兄が姪っ子に

「見納めかも知れないから、ちゃんとおじちゃんの顔見とこうねー」

と笑いながら言ったのは覚えてます。

「縁起悪っ、すぐ帰ってくるわ」

と笑いながら返したのも。


母は何も言わなかったですね。少し離れて立ってましたし。
すごく心配そうな泣きそうな顔してましたね……多分喋ると泣いてしまうから声をかけなかったんだと思います。


親不孝っすね、自分…………思い出すと今でも胸が痛い。


後日兄から聞いた話しなんすが、担当のお医者さんから

『向こうの病院に着くまでの命の保証はできない。3割の確率でもしもの事もあるという事は覚悟してください。』

と言われてたらしいです。
そんな事とは露知らず、この状況になっても自分が死ぬかもなんて事は想像もしなかったですけどね。

その後ストレッチャーに乗せられ救急車へと。
葬儀屋という仕事柄、故人様をストレッチャーに乗せる事はよくありますが、まさか自分が乗る側にまわるなんてね……

病院に入ったのが昼過ぎだったんですが、ストレッチャーで出た時はもう真っ暗でした。時間の感覚ほんっとなかったし現実感もなかったです。


「何か……大変な事になってんなぁ……」


なぜか他人事な夢心地なまま救急車は転院先の病院へと向かいます。

この時鮮明に覚えているのは、風が強くて顔にかかった雪の冷たさだけでした。
なぜかそこだけは、今でもはっきりと思い出せます。雪の質感までリアルに。不思議ですね。


思ったより長くなったんで、この続きは次回にでも。

www.butafe.site

~今日のなげき~

心筋梗塞、後輩への傷心、親不幸への罪悪感
私の胸、攻められすぎじゃない?


ぶたふぇでした。

葬儀と告別式の違い ~違いがわかる男とは言っても、先輩の前髪が数センチ短くなった事に気付かなかったぐらいで怒られたのは未だに納得できない件~

葬儀=僧侶が行う 告別式=遺族が行う

葬儀に参列した際

「葬儀並びに告別式」

というのを聞いた事がありませんか?

今日は葬儀と告別式の違いについてお話しさせて頂きますね。
今回も山の土のにおいがプンプンしそうな、田舎風味なお葬式のお話しです。
お葬式ってね、ほんと地域差はげしいから……
『うちの地域の場合はこうだったよー』ということは念押ししておきます。


以前、土葬について書きましたが

www.butafe.site


土葬でする場合は葬儀と告別式がはっきり別れていたので、わかりやすいかもしれません。
なので今回は土葬をした際の式の流れにそって説明させて頂きますね。


私が経験した土葬のパターンなんですが、全部禅宗(曹洞宗・臨済宗)だったんです。なのでその流れでこんな感じ。


↓ここから葬儀

~自宅にて~

僧侶 入場
読経開始
お寺さんによってお経を読むスピード、こまかな作法の違いなどでばらつきがあるんですけど、15~25分くらいお経が続きます。
お経が途切れお寺さんが立ち上がると、移動の準備です。

葬儀屋は祭壇を崩し、お棺を部屋の中央に安置、お別れ用のお花を切ったり等の作業に追われます。

急いでっ!でも音立てずにっ!

な感じで。ふふふ無茶言う……


その後遺族さんだけお別れのお花を棺に入れ蓋をします。
蓋をした後釘を打つのですが、その際にもきまりがありまして……

事前に区長さんが河原で拾ってきた石じゃなきゃダメ

うちの地域では、区長はお葬式に参加できないんですね。
なぜかと言えば、区長は神社でのお祭りや行事事の手伝いが多いんです。
神式では死=穢(けが)れという考え方の為、神社に行く事が多い区長は、穢れを持ち込まないように、葬儀には参加しないんです。
なのでその代理に石?って感じなんですかねぇ
今現在は区長も葬儀に参加しますよ。ご安心を。

ちなみに棺が家を出てお墓へ向かう時には、神社の前を通りません。
ただ立地的にどうしても通らないといけない場合もあります。その時は、白い大きい布で神社の入り口を隠したりするんですよね……


釘打ちが終われば、家を出発です。
お坊さんを先頭に、松明・お膳・位牌・遺影・喪主様・お棺の順で。
ご遺族、会葬者もその後に続いてぞろぞろ歩きます。後述します野辺の送りとよばれる大名行列のような道具を持ったりはまだありません。


~寺院にて~

お寺の境内の真ん中に棺を置いて、その周りを時計回りに3周します。かもめかもめっぽい感じで。
お棺は境内においたまま葬儀が進行します。

そのあと導師が引導文というをのべます
現世での未練や迷いを断ち切り、仏の道へと導く儀式です
慣用句で使われる『引導を渡す』のもとになってるあれですね

その後またお経が始まり、ここで遺族だけ焼香
お経が終わると、埋葬場所へと移動になります。
お寺さんはここでさよなら。見送ります。

↑ここで葬儀終わり
↓ここからが告別式

そして埋葬場所へと向かいます。
野辺の送りって言われる行列ですね。色々な道具をもって進みます。
f:id:butafe:20190320083951j:plain

~墓地にて~

墓地に着くと、掘っておいた穴の底に棺を安置
弔電の読み上げがある場合はここで。
そして遺族挨拶
挨拶が終われば遺族は墓場の入り口へと移動。帰る人達を見送る門礼といわれる行為の準備です。
次に会葬者が焼香し、棺の回りに花の投げ入れをします
一般会葬者は流れ解散となり、墓地入り口で待ってる遺族さん達に挨拶して帰っていきます。

↑告別式、ここまで
地域の人は残って一般会葬者が帰った後、土をかけお墓の体裁を整えたり、道具の片付けをしたりと色々やらされます。
そして一度みんな帰ってご飯を食べ、また夕方遺族さんとお寺さんで仕上げの法要って感じでしたね。



といった感じなんですが

現代は葬儀と告別式は別れてません。

『死は別れではない』という浄土真宗に至っては、告別式という言葉自体つかいませんし。
一般の方は気にしなくていいかと。

じゃあこの話しは何だったんだ……って事ですけど

放送設備、焼香する場所を自宅寺墓場と3箇所用意
祭壇を音を立てず急いで片付ける
葬儀始まりから終わるまで3時間越える
雨降ったら悲惨


『ぶたふぇ……頑張ってたなっ!!』

という事を言いたかっただけというお話しでした。


今日のなげき

『お願い、雨やませて』って言われても
それ葬儀屋の仕事じゃないから……
それができるなら他の仕事するから……
例えば?うーん…………

気象予報士か天の神様かなぁ……


ぶたふぇでした。

葬儀屋と霊について ~黒ネコと掃除道具、宙に浮く赤いリボンの女の子~ 

f:id:butafe:20190324130841j:plain

ある居酒屋にて

「お仕事は何をされてるんですか?」
「あ、葬儀屋です」
「え~じゃあお化けとか見たことありますぅ?」

この一連の流れ、葬儀屋あるあるです。
どうにも葬儀屋と心霊体験は、切っても切れない関係だと思われてるみたいですね。なので今日は、葬儀屋さんとお化けのドッキドキな話しですよっ。

誰もが一度は通る道

『実際のとこどうなのよ、ぶたふぇ?』

と聞かれると、そうですねぇ


見たことない。


あるわけないでしょ。
だってお化けとかいないし(断言)
そりゃあね、入社3年目くらいまでは、

「実は昨日……」

と真顔でSF (少し不思議)体験語ったりするんですよ。でもね、ある程度年数経つと全然そんな話ししなくなる。なんなんでしょうね、これ。

あの頃のピュアなお前、どこ行ったの?

って感じ。

汚れちゃった?もう見えないの?
葬儀屋らしく心まで黒くなっちゃった?
魔女の宅急便でキキがジジと喋れなくなった感じ?

てな事を聞くと大体相手は昔を思い出して赤面します。

この、葬儀屋が新人の頃にお化けが見える現象を業界では

葬儀屋的 中二病

と呼ばれています。
今でも「志摩スペイン村」と聞くたびに
「パルケェ…エスパァーニャアッッ!!」
と必殺技っぽく脳内変換してしまう中年中二病患者なので、気持ちはよくわかる。
中学時代の歴史の教科書に100本以上の日本刀を落書きしたのを思い出すと、顔が熱くなりますね。
さらに最後のページに赤ペンで書いた

刀の本数  弁慶以上、秀吉未満
我、マダ未熟ナリ

てのを見て、赤面しながら教科書を捨てた大学時代の自分にGJ。

天国に一番近い場所

喪服よりも黒い私の過去はさておき、よくよく考えてみてください。
葬儀場って毎日の様にお坊さん、神主さん、牧師さんが成仏する為の経をあげてるんですよ?
そんなとこに霊も居着きますかねぇ……

隣の部屋の住民が、フルボリュームで楽器を演奏してるみたいなもんです。
「成仏しろっ!」のシャウト付きで。
そりゃあ霊もポルターガイストで壁ドンするより、引っ越していくでしょう。

といった感じの騒がしい葬儀場ですから、世間一般の建物よりも、逆に霊は少ないと思いますよ。

飲み会の席での葬儀屋取説

霊が少ないとはとは言えですよ、葬儀屋の中には嬉々として心霊体験を話す奴も一定数いるんです。そういう奴に出会った時の対処法を話して今日の話しを終わりにします。
あまりそんな機会は無いとは思うんですが、飲み会の席で葬儀屋と一緒になったとしましょう。
その際、その人が「実は……」と稲川トーンで話し出したら

  • 素敵な葬儀屋で狙ってる場合

「え~こわーい……」
大げさに怖がってあげて下さい。きっと喜びます。

  • 興味なくて「はよ帰れ」ぐらい思ってる

「出たw葬儀屋的 中二病www」
と指差して笑ってあげて下さい。きっと帰ります。

まあそもそも、飲み会で素敵な葬儀屋に出会う確率なんて、ほんっとレアケースだと思いますけど。
それこそ霊を見るぐらい、奇跡的な確率かと。 

まとめ


『葬儀屋は霊を見る事が意外と少ない。
その見る確率は勤続年数に反比例する』



今日のなげき


まぁ……とは言っても……ほんとはね……
いえ……何でもないです……
皆様の安眠の為に私は何も言いませんよ……



皆様のおやすみを守る、ぶたふぇでした。

泣いてはいけない葬儀屋 ~葬儀と涙と吉岡里帆と、その相関性について~

f:id:butafe:20190323214142j:plain

泣きたい日もそりゃあるさ

昨日は葬儀屋の笑う事について書きました。
www.butafe.site


「笑う」とくれば次は対極にある「泣く」ではないでしょうか。
今日は葬儀屋と涙について書いてみます。


葬儀屋さんは、もらい泣きとかしないんですか?

とはよく聞かれます。はっきり言いますけど

泣きません。

理由については後ほど。

泣かそうとする演出

その前にどうしても言いたいことがあるんですよ。
お葬式の式前にナレーションを聞いた事がありませんか?

桜の花もほころび始める3月……○○様がその人生の幕を静かに下ろされました。
○○様はほんっとぉに温厚な方で怒られた姿を見たことないと聞いております………

といった感じの。
これねぇ…………必要?
何て言うか、泣かせよう泣かせようとする演出、必要ですか?

お前が故人さんの何を知ってんの?
たかだか2日前ぐらいに初めて会っただけでしょ?

とか思っちゃうんですよねえ
私、これダメなんです。嫌い。

葬儀屋が泣かせようとすんの、どうなんでしょうね。泣きたい時に泣いてもらえばいいと考えてるんです。煽る必要ないと思うんですけどねぇ……どうなんだろ?

この気持ちをどう言えばいいかとと思ってた時に、正解にぶち当たりました

後輩Y沢(30才 女性)が休憩室でテレビを観てた時に言ったんです。

嫌いやわぁ……
っざとらしい……嫌いやわぁ…………吉岡里帆。

あぁ……これだ。

あざとい。

アラサー女子が吉岡里帆に抱く嫌悪感
ぶたふぇがナレーションに抱く嫌悪感

ぴったり。
はまぐりのごとくぴったり。

ちなみに私は好きですけど。
吉岡里帆さん、かわいいと思います。

ナレーションについて語り出すとまだまだ終わらないので、48時間以上必要なので、この辺にしときます。

泣かない為の裏技的な?

さて本題、なぜ泣かないのかっていう話しです。
小さなお子様とかもうほんっと可哀想で、涙出そうな時とかあるんですけどね、泣きません。泣かないようにしてます。感情ぶれちゃうんで。冷静さ欠いちゃうんで。

慣れですか?

と言われますが、それもあるんですけど少し違います。スイッチ切り替えてるんです。
考えてみて下さい。例えば子供がいる社員が、自分の子供と同じ年齢の故人様に出会った時、我が身に置き換えないはずないんです。

「うちの子だったら……」
「お父さん、お母さんの身になれば……」

思っちゃいますよね。
一番ダメなのが、弔辞とか挨拶の時です。どうしても感情移入しちゃうんです。
なので、まともに話しの内容聞きません。音として耳に入ってきても、意味を捉えない。
本とか集中して読んでる時、テレビがついててもテレビの内容入ってきてないですよね?それです。

私が新人の頃「やばっ」と思った時は、段取りを考えるようにしてました。

次あれをこうして、ああして

みたいな。
ぜひ皆さんも感情がぶれそうな時は使ってみて下さい。例えば上司に怒られた時。怒られてる最中に

「机を回りこんで部長の左頬に右ストレート。騒ぎになるだろうから逃走経路はあっちで……」

とかね。
この時ニヤけてはいけません。雨に打たれた子犬のような表情は変えずにです。
この技を使うのは慣れが必要なので、まずは慣れるくらい怒られるとこから始めましょうか?

練習したジャンピング土下座はこの時の為。

じゃあ私がお葬式で司会した時に泣いた事ないのかと言えば…………アルヨ?

火葬場から帰ってこられた時に、ご遺族の方には『お見苦しいところをお見せしました』と謝罪に行きました。それで怒られるかと言えば

感情移入してくれて、ありがとう

ぐらいに言われましたね……
ん?じゃあ泣いてもいいんじゃないの?という事ですけど、それは違うと思うんです。

泣く事が最高の仕事になるのなら、毎回泣けよって話しですしね。お金をもらってるプロである以上、提供するサービスは均一でないと。でも事務的にはならないように

柔らかく、温かく、でも冷静に。

を心がけてます。お前、できてんの?と言われれば、そうですねえ

体は水風船のように柔らかく
発する蒸気で暑く
はしゃぐ若者を見て心冷める

ある意味できてる、やればできる子。これが、ぶたふぇクオリティ。


 

今日のなげき

最近泣いたのはいつだっけ……
あぁあれだ……

「ぶたふぇさん、発言にも加齢臭出てきてますよね」

と後輩に言われた日だ……
泣きながらリセッシュした、あの日だ……

ぶたふぇでした。

笑ってはいけない葬儀屋 ~ウソみたいだろ?微笑んでるんだぜ?これで。~

f:id:butafe:20190322200716j:plain

特技:微笑み返し

「葬儀屋さんって笑ったらアカンのでしょ?」

以前お客様にそのようなことを言われました。
式中ならともかく、普段の仕事中には微笑む感じが多いかと思います。

お葬式というと

『悲しい』 『暗い』 『涙』

というイメージですが、ご高齢で亡くなられた場合、ご遺族の方々には意外と笑顔も見られます。

あっ誤解しないで下さいね?
節目節目では涙を見せられます。

初めてご遺体にあった時
納棺する時
お別れのお花を入れる時

等ですね。
それ以外の時間は、割と笑顔も見受けられるっていう話しです。それも決して亡くなられた事を喜んでるわけじゃなく

長い入院生活お疲れ様
よくがんばったね
天寿を全うできたね

悲しさ・寂しさは確かにあるけども、故人様が苦しさから解放された安堵感の方が大きい
といった感じでしょうか。

また地方では、お葬式=お祭り的な面もあります。
近所の人達が集まってお酒を飲みワイワイ騒ぎ、
葬儀で使う道具をガヤガヤ言いながら作る。
親戚一同が集まる数少ない機会ですしね。
そんなイベント的なところもありますし。

そういう『安堵感が勝る』『お祭り的な側面』
という事情もあって、遺族様の笑顔も見受けられる事が多い為、こちらも自然と柔和な表情で対応するという感じですかね。

このように普段「柔らかい表情が多い」とは言っても、お葬式の最中には真剣な面持ちを崩しませんよ?

心が叫びたがっているんだ


そんな式中感情を表に出さない葬儀屋さん。
その中でも私の先輩、I川(40代 女性)に感心させられる事がありました。

あるお寺での葬儀の事。I川が司会をしていたんですけどね、式が終わった時に言うんです。

「式中、蜂に刺された。痛かったわぁ……」って。

ん?ちょっと待って。
式の間、私近くにいましたけど!?
全く気づかなかったんですけど!?
私がそう言うと先輩

「うん。我慢した」って。

えぇ……?
痛みって条件反射で、我慢とかいう話しじゃないと思うんですが……
この日から先輩は『ノーリアクション芸人 I川』と呼ばれてます、私の心の中でだけですけど。


でも普段の先輩はリアクションありまくりの騒がしい人なんですよ?
お菓子もらうと小躍りして必要以上に喜ぶし、虫がいたら

「ちょっ怖っ!ぶたふぇ、虫っ!」

と入社3日目の私を、I川先輩直属虫駆除係に任命するとかね……
先輩……私も虫嫌いなんですけど……

最近ではこんな事もありました。
冷蔵庫にお客さんからもらった缶コーヒーが大量にあったんですね。
まあ寒い日だったんで、私湯煎して先輩にもコーヒーを持っていきました。
湯煎しすぎたんでしょうか、先輩缶を持つなり

「熱っ!殺す気かっ!?」

と言って大げさに驚き(しかもそこまで熱くない)
缶を置き、指で耳たぶをつまんでいました。

式中なら蜂に刺されても表に出さない人ですが、スイッチ入ってないとこんなもんです。


それよりももっと大きな問題が。
熱いもの持った時に耳たぶつまんで指冷ますって……
ほんとにいたんだ……そんな人…………
37年間生きてきて、初めてリアルで見ましたよ。
絶滅危惧種に指定しとく?

そのような事を伝えた時に先輩は

「いやだって私、乙女やん?」

って言ってました。
ああ、うん。
……ん?ちょっと待って。何かおかしい。

『熱い時に耳たぶ持つのと乙女との関係性は?』
『そのリアクション昭和』
『40過ぎて乙女って……』

等の想いを『心の中』だけでつぶやきながら

「デスヨネー。I川先輩、乙女デスモンネー」

と返した私は、もっと誉められてもいいはず。
リアクションを表に出さない葬儀屋の鏡じゃないですか?
虫嫌いなのに、蜂に刺されてノーリアクションだったI川先輩の次くらいにはですけど。

今日のなげき

先輩、熱々おでんで復讐するのやめて。
今、スイッチ入ってないから……
リアクション取っちゃうから…………


ぶたふぇでした。

日本は土葬禁止!? ~腰痛サポーターと言うと必ず「あぁコルセット?」と言い直してくる後輩が控えめに言ってウザい~

f:id:butafe:20190321211610j:plain

土葬はできまぁす


日本で土葬ってできないですよね?

と勘違いをされてる方がおられますが、いえいえできますよ。正確に言うなら

昔から土葬がある地域ならできる

という感じですが。
もっとも火葬率が99%を越えてる日本では、ほとんど見かける事はないんですけどね。

私が住んでいるのは北近畿の山奥。葬儀屋に勤めだしたのが15年前になります。

その頃この地域では、自宅で行う葬儀が主流でした。自宅葬が盛んだった15年前だと、土葬も年に1,2件くらいは見かけましたね。

その後、葬儀の形も徐々に自宅葬からセレモニーホールでのお葬式が増えていき、自宅葬が減っていきます。ホール葬では土葬は行われなかったので、最後に私が土葬を見かけたのは7年前くらいだったでしょうか。


土葬って大変。……いやほんと大変だからっ!


なぜ土葬が無くなっていったんでしょうね?

ご遺体の腐敗等による衛生的な問題
土地の確保
時代の流れ
自治体からの許可がおりない

等が言われますが、まあぶっちゃけ大変なんですよ、土葬。


形が違う!

まず棺の形からして違います。
棺というと寝て入る『寝棺』を思い浮かべると思いますが、土葬の場合はサイコロ型の『座棺』が多いです。
読んで字のごとく、座って入って頂くんですけどね、体育座り、三角座りと呼ばれる状態で納棺です。
まあこれも寝棺より大変で……
座棺も腰くらいまで高さがあるので、入って頂く時もそれくらい持ち上げなければいけないですしね……
まぁ最後の方は寝棺の土葬になっていきましたけど。

置く場所も違う!!

次に自宅での安置場所。
え?祭壇の前でしょ?って思われるかもしれませんが、サイコロ型で高さもあるので、祭壇隠れちゃうんですよね……

自宅葬で火葬にする場合は、祭壇を組んだ後に納棺して祭壇前に棺を安置します。
一方、土葬の時はまず棺を安置。その後に棺の前に祭壇を作る感じですね。 
当然出棺の際には、祭壇の一部を片付けないといけません。そうしないと棺出せないんだもん……

ちなみに祭壇の一番上に神社というかお寺というか、建物っぽいのが乗ってますよね?あれを『棺前(かんまえ)』と呼ぶんですが、本来祭壇はお棺の前に祭壇を作る事から『棺前』といわれてます。今の時代はほぼ棺の後ろですけど。

移動手段まで違う!!!

そしていよいよ自宅を出発。埋葬場所へと行くんですが、霊柩車なんて使いません。ええ……かついで行きますよ……
時代劇の籠屋のごとく男4~6人でえっさえっさと運びます。
下の画像を見てもらえるとわかると思いますが、ほんと大名行列みたいですよね。色々な道具も持って歩きますし。

f:id:butafe:20190320083951j:plain

様々な道具達……これ使い切りなんだぜ?

道具の説明しちゃうと長くなっちゃうんで流しながら雰囲気だけでも。
四旗(しはた)
画像の前の方で竹に長い紙ついてるそれです。

花籠(はなかご)
運動会で使う玉入れの籠みたいなのに、折り紙で作った花びらや小銭を半紙でくるんだ物を籠の中にいれます。道中この籠をゆっさゆっさと揺すると、花びらがヒラヒラー小銭がチャリンチャリンとばらまかれます。うちの地域では、後に続く会葬者はこれを拾って持って帰ると縁起がいいと言われてました

提灯(ちょうちん)
手にもつタイプのです。ちなみに私、昼行灯とはよく言われます。「夜につよいね(ハート)」という誉め言葉でしょうね。……ん?ああ、お前ポジティブだなともよく言われます。

龍頭(たつがしら)
龍の頭を模したもの

天蓋(てんがい)
棺の上にかぶせる屋根っす

あとなぜかキャラメル係
箱に入ったままのキャラメルをばらまきます。
これも小銭と同じく後に続く人が拾って持って帰ります。
他にも色々あるんですけどね、きりがないんでこの辺で。


この大名行列のような光景を見た高校生 

『やべ参勤交代やんっ』

って言ってました。それを聞いた私の先輩I川(40代 女性)が言いましたよ。

あのな、ハイスクールボーイよく聞け?
徳川幕府は地方の諸大名の力を削ぐ為に参勤交したんだよ。
だけど土葬は……土葬はな?
近所のおっちゃんと葬儀屋の

時間! 体力!! 腰の寿命!!!

根こそぎ削いででいくからなっ!?
少しでも大変と思ったら、そこでひれ伏して見送れやっ!


等とは思っても口に出さず、キャラメルを手渡し


合掌して……見送ってあげてね?


と優しい笑顔で言ってました。

何で「合掌して」の後、少しためたの?と思いながらも、その対応の仕方に感心です。

I川先輩、かっけーす。今日から尊敬します。
ごめんね、先輩。今まで心が狭いと思ってて。
I川のIは

優しさにあふれてるI(愛)

だったんだね?
と思った直後、高校生が見えなくなるなり


銀歯とれればいいのに


とボソッと言ったの、私聞いてましたからね?

I川のIはいつも通り

心の狭い悲しいI(哀)

だったよ。
おかえり、いつもの先輩。
とりあえず尊敬すんのはやめとくね。


掘れ……ひたすらにっ!

そして埋葬場所。事前に穴を掘っておかなければいけません。まあこれもひとの胸くらいの高さまで掘っておくんですけど、雨降ったら穴崩れるし……
最後に土葬をした際「ちょ人手が足りんから手ぇ貸してやっ!」と穴掘りを手伝ったのはいい思い出です。

『これ……うちらの仕事と違うやん?』

とはこれっぽっちも思いませんでしたよ?ましてや

『お礼が缶ビールとキャラメル?この組み合わせって……柿ピーの方が……てかできれば現金………』

なんて事は、思わなかったですよ?
エエ…ホントニ……腰痛かったですけど……


そんな色々と大変な土葬。うちの地域では今後見ることはないかと思うと少し寂しくもありますね。

今日のなげき

墓穴(ぼけつ)を掘(ほ)・る

身を滅ぼす原因を自分から作ることの例え。


本来の意味での墓穴を掘った結果
身は滅ぼさなかったけど腰は壊れた
お礼がキャラメルとビール
甘くて苦い思い出だよ…………

ぶたふぇでした。